配偶者控除(配偶者の税額軽減)
1. 配偶者に対する相続税額の軽減とは
なぜ、配偶者は一定額まで相続税が控除されるのか。
それは夫婦が、婚姻期間中、共同して財産を形成しており亡くなった被相続人の財産もその配偶者(相続人)の協力があって築かれたと考えられるからです。
また、被相続人と相続人が夫婦の場合は、生活を共にしているので相続財産に対する配偶者(相続人)の生活保障という側面もあります。
そのため、その他の相続人より配偶者が優遇されているのです。
なお、相続税の配偶者控除を受けるためには婚姻していればよく、婚姻期間の要件はありません。
2. 控除の内容
1 1億6000万円まで
2 配偶者の法定相続分相当額まで
上記のどちらか多い金額まで配偶者は相続税が掛かりません。
3. 配偶者に対する相続税額の軽減を使わないほうがいい場合とは
配偶者控除が相続税の対策に有用であることを解説しましたが、配偶者控除を使わない方が良い場合も存在します。
それは配偶者である相続人が高齢であり、かつその他の相続人として子供が存在する場合です。
特に相続財産に不動産が含まれる場合は配偶者控除を使わずに直接共同相続人である子供が相続したほうが節税につながるケースも存在します。
なぜなら、近い将来再び相続が開始された場合、結果的に相続人である子供にすぐに相続移転することになる可能性が高いためです(二次相続を考慮)。
ただ、相続財産の多寡やそのご家族の状況等に応じて最適な遺産分割の方法は異なるため、相続に詳しい専門家にご相談することをおすすめ致します。
4. 配偶者に対する相続税額の軽減を受けるときの注意点
1 相続税の申告をしましょう
配偶者控除は税務署に対して申告しないと、その控除を受けることはできません。
自分の相続は配偶者控除を使えば相続税は掛からないので申告をしなくても良いと言いうことにはならないのです
(配偶者控除等の特例を使わずに、相続財産が基礎控除額以下の場合には相続税の申告は不要です)。
2 相続税の申告期限に注意をしましょう
相続税の配偶者控除の申告は相続税の申告期限(相続開始から10カ月)までに行う必要があります。
なお、申告期限までに遺産分割協議が整わなかった場合でも、相続税の申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付して期限までに提出することにより、3年以内に分割協議が整えばその時点で配偶者控除の特例の適用を受けることが可能です。
5. 配偶者控除による税額軽減に必要な書類
1 戸籍謄本等
配偶者(相続人)であるということを証明するために戸籍謄本または図形式の法定相続情報一覧図の写しを添付します。
2 遺産分割協議書/遺言書
配偶者の取得した財産が分かるように遺産分割協議書または遺言書の書類も添付します(遺産分割協議書の場合は相続人全員の印鑑証明書の添付も必要になります)。
なお、申告期限内に分割できない場合には、「申告期限後3年以内の分割見込書」の提出も必要です。
※相続税の申告後に行われた遺産分割に基づいて配偶者控除を受ける場合は、遺産分割が成立した日の翌日から4カ月以内に更正の請求という手続きが必要となります。